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外国人労働者の受け入れ拡大問題

これまで、日本での外国人の受け入れは高度な技能を持つ人や技能実習生に限ってきました。しかし、国内の労働力不足から、これまでの出入国管理行政を大転換し、一定の技能を持つ人を幅広く受け入れる方向に変わります。安倍首相は「いわゆる移民政策をとる考えはない。深刻な人手不足に対応するため、即戦力になる外国人材を期限付きで受け入れるものだ」と述べていますが、実際には移民政策になると考えられます。
このことについての賛否はいろいろありますし、悪質な外国人、ブローカーを様々見てきましたので、当職もいろいろと思うところもあります。

おそらく、政府からのトップダウンで進んでいるのだと思いますし、法務省の内局でも色々と検討しているのでしょうが、毎度のことながら、入国管理局の現場の意見など無関係にすすんでいるのだと思います。国会議員の先生方も、入管行政などにはあまり興味がない方が多いので、大きな修正もなく国会を通過すると思います。海外人材の斡旋業者と手を組んでいる先生が沢山おられるような噂も聞こえてきますので、多少の利権もあるのかと疑ってしまいます。
入管法が改正・施行されると、決まって現場が混乱し、様々な問題点が噴出し、あわてて運用を見直すというのは、いつものことです。そもそも入管の現場の審査官の声を吸い上げるシステムがほとんどないというのが一番の問題なのでしょう。

これまでに聞こえてくる情報のポイントを整理すると、
 〇 入国管理局が法務省の外局となり出入国在留管理庁となる(多分、キャリア職員のポストが増えます)
 〇 外国人の在留資格に
    特定技能1号「相当程度の知識または経験を必要とする技能」
    特定技能2号「熟練した技能」
  を創設
 〇 事業所(受け入れ機関)が外国人を受け入れる際は原則直接雇用とする
 〇 国外での悪質な仲介業者の介在防止策を講じる
 〇 受け入れ要望のある分野14業種(この中から受け入れ分野を決めるとみられる) 
  ・介護
  ・ビルクリーニング
  ・素形材産業
  ・産業機械製造
  ・電気・電子情報関連
  ・建設
  ・造船・舶用工業
  ・自動車整備
  ・航空
  ・宿泊
  ・農業
  ・漁業
  ・飲食料品製造
  ・外食

自民党法務部会では異論も出ているようですが、概ね上記のラインで改正されるのではないかと思います。
ちなみに、出入国在留管理庁の長官には受け入れ機関への指導・助言の権限を与え、日本人と同等の報酬や教育訓練、福利厚生施設の利用などを保障するなどなっていますが、あまり意味がないと思います。同等の報酬を与えることは現在も入管から問われますが、結局、課税証明書や源泉徴収票で確認するのが精いっぱいで、小さい会社ほど、いくらでも誤魔化すことが可能です。
また、熟練した技能がある外国人は条件付きで在留期間を更新できるようにする、などと言ってますが、「熟練した技能」ってなんでしょうか。例えば、上記の「飲食料品製造」で熟練した技能? 結局、なんでもありになると思います。
「相当程度の知識または経験を必要とする技能」と言っても、現地での実務経験などは、在職証明書などで証明する程度でしょうから、いくらでも偽造できると思います(入管職員が一番知っているはずです)。

そして、一度できた制度は、だんだんと緩い方向へ行きます。日本へ入るハードルが下がれば下がるほど、マフィアや犯罪者麻薬・覚せい剤常習者のような質の悪い外国人が流入して来るのは間違いありません。本当にその覚悟が日本人にあるとは思えませんし、それを防ぐ能力が入管にあるとも思えません。

まあ、最近の入管の審査をみると、まったく問題のない「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の申請に、難癖をつけて不許可にしたり、いたずらに時間をかけて審査をしているようなので、入管も人手が足りないはずなのに相変わらず、力の掛け方がずれていると感じずにはいられません。
なぜなら、上記14業種が、ほぼ無条件で雇用できるようにしようという流れの中で、今日も入管では、大卒で経歴も家柄も素晴らしい外国人の就職先の業務内容の細かいところを突いて在留を認めないようなことしているのです。そして、本当に日本から退去させるべき悪質な外国人が簡単に在留許可を受けたり、虚偽の難民申請を繰り返す連中を野放しにしている現実があります。
まあ、公務員ですので目先の事だけ見てマニュアル対応をしているということでしょう。残念なことです。