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在留特別許可について(5)

口頭審理について

さて、違反審査が終わると、入管法24条のいずれかに該当すると認定されます。

例えば、不法残留(オーバーステイ)であれば、「入管法24条四号ロに該当し、かつ出国命令対象者に該当しない」と認定されますし、不法入国であれば「入管法24条一号に該当する」と認定され、認定通知書を渡されます。この認定通知書をもらうのと同時に口頭審理放棄書に署名するとすべての調べが終了し、速やかに退去強制令書が発付され、帰国の準備に入ります。一方、認定に間違いがある(滅多にありません)場合のほか、容疑事実は認めるが在留特別許可を求める場合は、口頭審理請求を行います。口頭審理の請求は調べの中で調書に記載してもらうだけですので、特別な手続きは要りません。在留を希望すれば、審査官が審査調書を読み聞かせた後、「読み聞かせてもらった調書の内容に間違いはありません。しかし私には日本人の配偶者がおりますので、このまま日本で暮らしたいと思います。ですから認定に服することなく、口頭審理を請求します」と審査調書に記載してくれますので、これに署名すれば口頭審理を請求したことになります。

口頭審理は、実質的に最後の調べになります。口頭審理には、配偶者や婚約者などの関係者の立会い、弁護士の同席も可能ですが、誰の立会いがなくても問題はありません。口頭審理は、入管の特別審理官によって行われます。特別審理官といっても、入国審査官に変わりはありません。一部、特定の入国審査官(比較的ベテランの審査官)が特別審理官に任ぜられています。東京入管ですと口頭審理と違反審査で別々の係になっていますが、小規模な官署ですと、事件毎に審査官と特審官が入れ替わって交代で担当しているような場合もあります。

口頭審理の内容

口頭審理で行われることは、

1 入国審査官の認定に間違いがないかの確認

入管法24条のいずれかに該当するとした認定に間違いがないかどうか、再度、確認します。間違いがあれば、即放免(容疑事実なし)となりますが、「認定に誤りがある」というようなことはまずありません。稀に、適条が変更になる場合がありますが、この場合、適条校正といって遡ってすべての書類を訂正していくので、放免とはならないのです。

しばしば、「同じ入管の中なのだから、判断が変わる訳がないに決まっている」という人もいますが、意外と入国審査官や特別審理官は独立していて、1次的には個々の審査官の判断が尊重されます。もっとも、複雑な案件に関しては事前に入管内で擦り合わせを行うのが普通ですので、判断が大きく変わることはありません。また、放免しなければならない事態の場合、大問題になるので、そのような場合は法務本省も交えて検討されますが、そのようなことは滅多にありません。

2 情状面の審査

特別審理官が、審査調書等を確認し、審査調書の内容に間違いがないかを容疑者に再度確認します。そして、不足している部分があれば足りない部分を再度ヒヤリングするなどします。また、必要に応じて、立会人や弁護士に意見を述べる機会を設けます。意見と言っても大抵は「配偶者がいるので、在留特別許可をお願いします」程度のものです。違反審査の段階で、詳細な調べをしている場合は、口頭審理で聞かれることは必然的に少なくなり、比較的短い時間で終わります。通常、容疑事実に争いがあることはほとんどありませんし、内容に争いがあることもありませんので、弁護士が同席してもしなくても、結果に影響はありません。また、弁護士の付いている案件は、弁護士と日程調整をする必要がある上、それに合わせて通訳人を確保する必要があるため、違反審査終了から口頭審理までの期間が長くなる傾向がありますので、収容中の案件の場合は、注意が必要です。

口頭審理では最後に、「入国審査官の認定に誤りはない」という判定書を渡されます。違反審査の後と同様、在留特別許可を希望する場合は、異議申出を行います。異議申出については、異議申出書がありますので、ここに記入して提出します。

口頭審理終了後について

口頭審理が終わると基本的には入管でのインタビューは終了です。特別審理官はインタビューのほか、違反調査や違反審査の際に実態調査が行われていなければ、実態調査も行うことがあります。そして、それまでの証拠資料や調書を決裁にあげるのです。それらの資料を元に、法務大臣または地方入国管理局長が在留特別許可を与えるかの判断をします。内容によって本省入国管理局で判断する場合と地方入国管理局で判断する場合に分かれます。本省まで上がるケースでも、本省が決定をする場合と、本省が地方入国管理局の決定を追認する場合など、いくつかのケースがあります。場合によっては、特別審理官に対し、調査不十分として更なる調査の指示がされる場合もあります。

あとは、結果が出るまで待つだけです。

即日許可になる場合

これまでのコラムで、在留特別許可の手続きについて、詳しくお話ししてきましたが、出頭申告の場合、これらの手続きが大幅に簡素化されることもあります。

最短の場合、出頭申告の後、最初に呼び出しをされた日に、収容令書の発付→違反審査→口頭審理→異議申出→在留特別許可まで約半日から1日ですべての手続きを完了し、在留資格が付与されます。この簡易な手続き即日在特案件と言って、在留期限を忘れてしまった失念ケースのほか、婚姻関係に疑いがない場合などに適用されます。

では、失念ケースは別として、婚姻関係に疑いがない場合とは、どういう場合でしょうか。考えられるケースとして、夫婦の間に日本国籍の子供がいる場合、配偶者の資産や収入に問題なく、状況から同居生活に間違いがないと判断された場合に行われています。逆に配偶者が無職であったり、借金だらけのような場合は難しいでしょう。また、最初に出頭した調査部門で選別されますので、出頭時の印象が大切なことがご理解いただけると思います。

在留特別許可について、多少なりともご理解いただけたかと思います。次回は、仮放免許可についてお話しします。

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