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イベントスペースの営業許可

東京・多摩地域に所在するビルの地下1階で、飲食店兼イベントスペースの経営をしたいというお客様から相談をいただきました。

クライアント様はアイデアに溢れている方でしたので、次から次にアイデア・企画が出てきて、やりたいことがたくさんあり、話を聞いているだけで、一緒にワクワクできました。

アイデアは素晴らしいのですが、現実を見ると様々な法的な問題があり、実際は、許可を取得できないと思われるアイデア、同時には取得できない許可など、問題がたくさんありました。さらに、すでに地下の店舗スペースを契約してしまっているため、物件の変更はできないという条件もありました。

ところで、新規事業を計画している方は、上記のクライアント様と同じく、

  • どういう営業をするか
  • どんなサービスを提供するか
  • 何を売りにするか
  • 営業時間はどうするか

など、色々考えて、「あれもやりたい」「これもやりたい」など、アイデアが溢れていると思います。

しかし、営業をするためにはいくつかの許可を取る必要があります。そして残念ながら全てを実現することができないことも多いのです。

前田行政書士事務所では、クライアント様の希望や条件をうかがった上で、何ができて何ができないのか。実現するためには何が必要かをご提案致しております。そして、よりご希望に近いお店にするべく、関係する役所との折衝を代行しております。

どんな許可が必要か

今回、ご相談のあった案件を例に、オープンまでにどのような許可が必要で、どのような営業ができるのかを考えてみましょう。

クライアント様のご希望は次のようなものでした。

  1. コスプレイヤー撮影会、アイドルの卵の握手会をしたり、アニメグッズの販売や個展、スポーツ中継、ライブや演劇を観ながら飲食できるスペースとして、場所を提供する。
  2. 飲食はクライアント側で提供するが、調理は行わないで、外部のケータリングを利用。但し、アルコールを含む飲料は、グラスに注いで提供。
  3. 営業時間は、お客の要望で24時間対応する。
  4. 場所は、商業地域でビルの地下1階を借りている。

他にもいろいろあるのですが、とりあえず1〜4を順に検討してみます。

1ですが、まず、場所貸しであっても、貸主となるクライアント様が許可をとる必要があります。撮影会は特に許可は必要ありません。握手会は接待になる可能性がありますが、CDやグッズの販売に伴うものであれば問題ありません。ライブコンサートや演劇の場合は、興行場営業の許可が必要となります。但し、ライブや演劇に飲食に伴うものであれば、興行場営業の許可ではなく飲食店営業許可が必要となります。興行場営業の許可は飲食店営業許可と同じく保健所に申請するのですが、収容人数、トイレの数などが厳しく決められており、このようなビル地下のスペースで許可を得ることは、不可能です。

したがって、飲食店営業許可を取れば、飲食に伴うライブや演劇などのイベントを企画することは可能であり、絵画や写真、グッズの販売は問題なくできます。

2については、「アルコールをグラスに注ぐ」行為は調理として扱われますので、たとえ料理を一切しなくても、飲食店営業許可が必要となり、厨房の設備も基準通りのものが要求されます。

3については、分けて考える必要があります。

  • お店を通常の飲食店営業とする場合、お酒が提供できるのは、深夜0時までです。深夜0時以降もお酒を提供する場合は、深夜酒類提供飲食店の届出、通称(深酒)が必要となります。届出といっても、所轄警察署に風俗営業許可並みの書類の提出が必要となりますので、慣れていないと面倒な程の書類を作成する必要があります。また、深夜酒類提供飲食店の場合、営業時間の規制はありませんが、接待行為は24時間一切禁止であり、店側(主催者側)がカラオケの演出をすることも禁止となります。
  • 飲食を伴い、ライブを行う場合、スポーツ中継を行い客に応援を呼びかける場合、クラブのように客がダンスをする場合、カラオケ設備を設けて照明などで演出する行為は、特定遊興飲食店営業の許可が必要になります。ただし、特定遊興飲食店営業の許可は、営業できる地域がかなり限定されます。因みに、風俗営業許可に許可を得られる地域とも若干基準が異なります。
  • 風俗営業許可で対応する場合は、営業時間が深夜0時まで(場所によっては深夜1時まで)となるため、クラブなどで行われる、「オール」のような営業はできません。警察の見解では、0時までに完全に客のいない状態にしなければならない。したがって、クラブやディスコのような企画を行おうとする場合は、23時30分頃には閉店準備に入らざるを得ないので、希望する営業はできない。

これらを考えた時、今回のケースでは、オールナイトで、ダンスやライブを行いたければ、特定遊興飲食店営業の許可が必要となるでしょう。しかし、ここで問題となるのは、特定遊興飲食店営業の場合、風俗営業許可と同様、店内のテーブルや椅子のサイズ・数・配置、音響・照明機器等の設備の配置を記載した詳細な図面を作成し提出する必要があります。そして、これを変更する場合は、設備の変更承認申請をする必要があります。

つまり、特定遊興飲食店営業の許可や風俗営業許可を受けてしまうと、日常的に、設備の配置や構成を変更し、多目的なスペースとして使用することが出来なくなり、営業できる内容が限定されてしまう。

これらを踏まえ、クライアント様に、何を優先して営業するのか、絶対にやりたいことと、妥協できることをよく考えてもらいました。

どのような許可を取得したか

上記を検討した結果、クライアント様は、

優先度の高いものとして、

  1. 劇団やバンドにスペースを貸し、観客に飲食を提供すること
  2. 撮影会、握手会、グッズの販売、個展などを行う
  3. サッカー、W杯、オリンピックなどの中継を行うスポーツバー

をあげました。

一方、深夜にオールでダンスをするイベントや深夜酒類の提供は諦める。営業時間も余裕を持って午後11時30分までとする。

ということになりました。

平成28年6月の風俗営業法改正により、ダンス営業は風俗営業から外れましたので、このケースでは、飲食店営業許可さえ取れれば、営業できることになります。但し、3のスポーツバーとしての営業に関しては、グレーな部分もありますので、所轄警察署との解釈のすり合わせをしておく必要と、ルールの厳守が必要となります。

そのため、必要な許可や届出は

  1. 飲食店営業許可
  2. 防火対象物工事・使用開始届出

ということになりました。今回のクライアント様の方で、2の防火対象物工事・使用開始届出は提出するとのことでしたので、結局、当事務所では、飲食店営業許可の申請のご依頼を受けることになりました。

飲食店営業許可自体は、ハードルの低いものですが、お引き受けした時はスケルトンの状態であったこと、工事業者が飲食店営業許可をよく知らなかったことから、工事前から図面を確認し、構造の変更、素材の変更、厨房の配管の変更などを指図しながら、自治体や保健所によって基準が違うことが多いため、保健所と設備の基準のすり合わせを行いました。

このような話をすると、必ずと言っていいほど「守っていないお店はたくさんあるじゃないか」という質問をされます。私たち行政書士は法律に従って許可を申請するので、許可を受けた後、ルールを守らない経営者がいたとしても、どうすることもできません。しかし、現実に違法行為を行っているお店はありますし、摘発されるお店もあります。摘発の多くは、同業者などからの通報とも言われています。歓楽街では、少しでも時間をオーバーして営業していると通報されると聞きます。すぐに摘発されるので、意外とルールを守っているようです。

飲食店営業許可、風俗営業許可、深夜酒類提供許可、特定遊興飲食店営業許可など、各種営業許可については、

もご覧ください。

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